となえよ、友

コンピュータのセキュリティの分野ではいわゆるパスワード破りの方法として古典的なものに、辞書にある単語の組み合わせを片っ端から試してみるという辞書攻撃と呼ばれる手法が知られています。映画とかTVドラマでいわゆるハッカーがそれっぽいプログラムを走らせてプロテクトを破ったりしているときに使っているようなやつです......たぶん(まともなパスワードならさすがに数分で破れるはずはないので)。

 

モリアの入り口の"合言葉"も原作では"password"です。すなわちガンダルフがドゥリンの扉でやっていたのはまさに辞書攻撃による世界最古のクラッキングだということになります(笑)。

......とはいえ、ある意味それも当然なのかもしれません。なにしろプログラマーの世界で、最上級の凄腕のハッカーに畏怖と敬愛を込めて送られる称号といえば「ウィザード」に他ならないのですから。

 

 

P. S.

結局パスワードが扉の上に書いてあったというオチでしたが「パスワードを書いたポストイットをモニタに貼り付けておかないように」という通達も現実によくある話です。#すいません私もたまにやります(爆)

教授が指輪物語を執筆していた時代はちょうどアラン・チューリングがコンピューターの原理となる理論を提案し、原始的な電子計算機が開発され始めた頃になります。いわゆる計算機サーバーなんかが生まれるずっと以前にパスワードによる認証の本質とその欠点を洞察していた、と言えなくもないのでしょうか......あるいはもしかしたら、最初期のOSに"パスワードによるログイン"という仕様を実装したMITあたりの誰かが指輪物語の愛読者だったのかもしれません。

アメリカで指輪物語が大学やヒッピーなど若者を中心に大ブームになったのは1960年代後半とのこと。マルチユーザーOSの原型である"Multics"の開発と時期はちょうど重なります(笑)

MITの開発したCompatible Time Sharing Systemで1961には既にパスワード認証が使われていたようです。指輪物語は一応出版されていたみたいですがブレイクしたのはもう少し後になります......