もしも中つ国が

この記事は トールキンワンドロ&ワンライ2018(@1hTolkien)さんの企画、

#1hTolkien 第100回に参加したものです。

お題 「もしも○○が○○だったら」より、

「もしも中つ国が"中国大陸"だったら」

 

もしもトールキンが古英語の研究者ではなく、東洋文化史の碩学だったら、アジア版指輪物語の世界はいったいどのように編まれたでしょうか...?

 

例えばこんな物語。 

舞台のイメージは春秋戦国時代に似た遥か古代、ちょっと周っぽい古代王朝の血を引く流浪の皇子が、田舎の遺跡で偶然発見された古代王朝の印璽を守り、迫り来る追っ手達を逃れながら都まで旅を続け、"中つ国"を魔術と暴力で支配しようとしていた黒の王を打ち倒し、ついに正統の王朝を復古させ、皇妃には桃源郷に住まいしていた仙女の一人を迎える、という冒険活劇...ありかもしれません(笑)

印璽には人を支配する命令を出すことのできる魔法の力があるのですが、皇子達の陣営は最後に印璽を壊すことで黒の王の持っていた宣旨の持つ支配の力を無力化し、従わされていた人々を解放し、これからは人の力で世を治めていくことを誓います。

 

彼を助けるのは一人の老賢者に、桃源郷や崑崙山に隠れ住んでいた不老長寿の仙人仙女達、北方の鍛治族や金髪碧眼の西方の民の旅人たちや、騎馬民族の盟友。印璽を見つけたのは中原に住むという陽気な小人族...あんまりキャラクターを増やすとどちらかというと「封神演技」か「西遊記」っぽくなってしまうそうですが(笑)

オークは猿人というか原人の雰囲気で。サルマンはちょっと怪しげな道士風になるでしょうか。龍を筆頭に獅子や麒麟などなど、山海経っぽい化け物達にもいろいろ登場してもらいましょう。

アマンは海の向こうではなくて西方の人跡未踏の山々の頂にあるとされる須弥山のような浄土になるかもしれません。天竺とはまた別物ですが、まあ似たような感じで。天上の神々は例によって本編では姿は見せません。

 

背景には中国だけではなくインド、チベット中央アジアペルシャ地方などの神話、伝説を広くネタに取り込み、それらの王道パターンをしっかり踏まえる必要があります。お土地柄、若干仏教説話っぽいエピソードがいろいろ入ってしまうのは大目にみてもらいましょう。あえて日本は設定に入れてません...物語においては空白にしておいた方がいい場所というものもあるかと思います。

 

そして、文字です。言語ももちろん大事ですが、東洋文化圏の真髄は文字です。 白川静先生ばりに、甲骨文字や金文の構成を踏まえ、篆書楷書隷書はもちろん、ヒエログリフトンパ文字なども参考に、独自の文字体系とその進化の歴史、地方ごとのバリエーションなどまで含めた仮想の資料と歴史を作り上げ、最終的には架空の書家の名筆を生み出せるぐらいに練り上げててこそ、「東洋のトールキン御大」ならではの世界と言えるのではないでしょうか(爆)。

 

アイヌリンダレの代わりに、太極の混沌の中で一つの意志が「文字」を書きつけるところから世界が始まるかもしれません。イルーヴァタールは歌の代わりに文字を連ね、アルダの歴史を紡ぎ出します。偽書を書き出して世界を都合よく捻じ曲げようとするものも生まれるかもしれません。正史偽史が混沌とするかもしれませんが、最後にはより力があるものが書いた物語が現実になります。いえ、現実になる物語を書くことのできたものこそが、力があるものと定義されるのかもしれません。

魔法使い達も呪文を唱える代わりに、さまざまな文字を書いて魔法を使うでしょう。文字により世界を上書きし、普通なら起こらない現象を引き起こすのが、彼らの力です。

 

いささか風呂敷を広げすぎて1hではまとまりがつかなくなってしまいましたが、シェアードワールド的なプロジェクトとして各界の専門家が集まって、そうですね、10年ぐらいかければ、それなりのものができるかもしれません。

...みなさん、いかがでしょうか?