エレサール王の戴冠

アラゴルンが即位する時、ファラミアから王冠を受け取ったのを一旦返して、フロドに託し、ガンダルフに戴冠させてもらっています。指輪戦争の真の功労者を立てたかたちですが、本当にそれだけの意図だったのでしょうか。

 

アラゴルンの言動をみる限り、ガンダルフたち、イスタリと呼ばれた魔法使たちが西方から海を渡ってきた者であることは知っている、あるいは何かしら推察していると思われます。イスタリがサウロンと戦うために西方から遣わされたとなればその主君はヴァラ以外には考えられません。ヌメノールの子孫としては頼もしい味方であると同時に、決して裏切ったり失望させたりするわけにはいかない背景を持つとも言えます。本編ではガンダルフ自身はあくまでも人々を奮いたたせ、支援する立場を貫いていますが、「わしもまた執政である」とデネソールに語り、またサルマンの杖を折るだけの権限を有しているわけですから。

 

そのガンダルフに戴冠してもらえる、ということになれば、見方によればゴンドール、アルノールの王としての立場をヴァラ達の代理として支持、承認してもらった、とみることもできそうな気がしてきます。ヌメノールが大海に沈んで以来、アマンとは没交渉のまま放浪を続けてきたデュナダンの末裔としてはこれ以上望むべくもないお墨付きではないでしょうか。もし狙ってやったとすると、真面目な堅物の印象の強いエレサール王ですがあれでなかなか政治力のある曲者だと言えるのかもしれません。