旅をさせよ

しばしば言及されていますが、ホビットの寿命は人より長めなので ホビットたちの"年相応"の感覚というのは若干実年齢とずれがあります。一番単純な計算として、成人ならぬ成ホビットの33歳が日本人の20歳となるよう1.65で割るとすると、 出発時の年齢を換算した場合、

 

フロド、ホ50歳:人30歳 〜叔父さんの地所を相続した若旦那

サム、 ホ38歳:人23歳 〜家業の庭師を継いで数年目

メリー、ホ36歳:人22歳 〜大学4年生ぐらい

ピピン、ホ28歳:人17歳 〜高2ぐらい

 

といった感じになります。 ピピンが一番無軌道なのもこう並べるとなんとなくわからないでもないかもしれません。むしろ、デネソール侯への受け答えとかその若さにしては立派だったなあ、と。まあ、メリーとピピンもああ見えて名家の跡取りです。彼らがローハンの王様やゴンドールの摂政の前でも物怖じせずにいられたのは、その出自のおかげもあったのかもしれません。

 

昔読んだときは、ホビットたちは人間社会と隔絶していたから権威や身分にとらわれないのかな、とイメージしていましたが、いくら僻地といっても別に縄文時代のような狩猟採集の部族社会というわけではありません。また、どちらかと言えば人の流動の少ない田舎ほど社会地位による力関係は絶対的になり、身分の違いといったものには敏感になる傾向があります(例えば江戸時代のお百姓なら、相手が馬に乗っていていい服を着ていた時点で、誰か知らなくてもとりあえずへりくだりそうです)。

ですが、メリーもピピンも王様や執政に対して萎縮もせず、むしろ感心されるぐらいに礼儀にかなった振る舞いを披露します。単に身分に無頓着ならああいう格式張った言い回しは出てこないでしょうし。両者ともああ見えて(二度言いました)小なりとも貴族の惣領として礼儀作法などもしっかりした教育を受けていたのに違いありません......実家に断りもせず流浪の旅に飛び出してしまっていますが(汗)

成人しているメリーは百歩譲って自己責任としても、ピピンは未成年です。お父上のパラディン氏はご存命で当時は現役でセインを勤めていますし、母上もたぶん健在でしょう。末っ子で後継ぎの長男とくればさぞかし大切にされていたことと思われます。結果として錦を飾ったからまあいいようなものの、行方不明の間のご両親のご心労いかばかりかと思うと......

 

あなたなら、自分が何歳の時なら家を出て旅に出る気になれるでしょうか? あるいは、子供が何歳になったなら旅に送り出せるでしょうか?