わが友グワイヒアよ
黒門前の最後の戦いで、フロドたちを助けにいくためにガンダルフがグワイヒアに頼むかっこいいシーンがあります。
『「あんたはわしを二度運んでくれた。わが友グワイヒアよ、」と、ガンダルフはいいました。「もしあんたが喜んでやってくれるなら、三度目であんたの骨折りもむくわれるぞ。」』
......三度目で報われるとは何のことか、ずっとすっきりしませんでした(笑)。
原文だと"Thrice shall pay for all."とあります。そのまま読むとグワイヒアがガンダルフに何か借りを負っていて、それがやっと完済するように聞こえます。検索すると海外の掲示板でも解釈がいろいろ分かれているようです。
『ホビットの冒険』にはガンダルフが昔、鷲の王の矢傷を癒したとありますので、その恩返しとの意見も多いようです。しかし、ここの「二度運んでくれた」は、オルサンクからの脱出を一度目、ジラク=ジギルを二度目と考えられますので、かつてビルボと一緒に助けてもらったのは勘定に入らないようです。とすると、『ホビット』に出てきた鷲の王とグワイヒアは別人ならぬ別鷲のように思われます。じゃあ、ランドローヴァルが鷲の王でグワイヒアはその弟だ、いや、二羽ともその鷲の王の子孫だ、と、けんけんがくがく。
で、その掲示板でも指摘されていた点ですが、実は『ホビットの冒険』にもよく似たセリフがあるのです。ビルボが二度ほど言っているのですが、
"my father used to say, 'Third time pays for all.'" (1)
などとあります。
これは古いことわざだそうで、日本語なら「三度目の正直」が一番近いでしょうか。「(二度失敗しているが)今度こそうまくいく」、「失敗のぶんも取り戻せる」といったニュアンスがあるようです。ガンダルフの言い回しは若干文語調になっていますが、きっと意味は同じでしょう。
これを踏まえてガンダルフのセリフを私なりに訳し直すと、こんな感じでしょうか。
『「あんたはわしを二度運んでくれた。わが友グワイヒアよ、」と、ガンダルフはいいました。「もしあんたがいやでなければじゃが、こんどこそ最後、三度目の正直じゃ...(中略)...前回運んでくれた時よりも、わしは大して重くなっておらぬはずじゃ」』
もとのテキストではいささか偉そうだったのが、うってかわってかなり下手に出ている印象になってしまいました(爆)。まあでもこれまでのガンダルフとグワイヒアのやりとりをみても、これぐらいの力関係なのではないでしょうか。
ことわざや警句の類をアレンジしてセリフに入れるのは教授の十八番なので、ここもその流れで解釈して問題ないと思います。
ああ、すっきりしました(笑)。
(1)邦訳ではそれぞれ
「『三度目の払いで片がつく』とわたしの父は口ぐせに言っていました。」
「わたしの父は、......また、『三度目の正直』とも言いました。」
となっているようです。